KUSTOM ORDERを受けると言う仕事。後編。 |
読んでない方は昨日のも合わせて読んでもらうとわかり良いかもしれません。
カスタムって言葉にまつわるなんとやらを昨日は書きました。
つまんで言うと、、
CUSTOMと言う言葉は、「あつらえ」、、一人の、もしくは特定のお客さんのために作られた特別仕様を造ると言った意味の言葉で、
KUSTOMと言う言葉は、造り手にとっての「自分だけのスタイル、自分だけの造りかた」という意味が含まれる特別仕様を造る事だと思う、、、
更にいえば、
”CUSTOM”はお客さんの要望にいかに応えられるか、
その人がそれを使用する上でいかに快適に使えるか、、
まず第一にそれが求められるんだと思う。
お客さんの為に、、そんな思念が根っこにあるべきだと思います。
”KUSTOM”はお客さんがどのようにそれを使うのか、アーチストはそれに思いをはせながら、
お客さんの希望を知った上で、お客さんが創造する完成像よりも圧倒的にカッコ良いデキで
お客さんをうならせないといけない。
アーチストのセンス、知識、思いが問われます。
お客さんの為にというよりは、お客さんの要望というお題をこなしながら、
お客さんが求める以上の物を、自分のセンスで、自分だけのやりかたで生み出し、お客さんを黙らせる事だと思います。
わがPeepShowGalleryは、お客さんからKUSTOMの仕事を受けます。
CUSTOMではなく、KUSTOMだと思っています。
俺らのような狂人に付き合ってくれる、懐の深いお客さんの頼みなれば、、
どんな希望にも応えたいと思いますが、いつもお受けできるとは限りません。
そしていつもお客さんの完成像と同じにはなりません。
よく自分の頭の中にある想像の作品をそのまま作って欲しいというような注文があります。
そういうオーダーはどのようなお客さんでもお断りしています。
いつまでに間に合わせてくださいと言うオーダーも、特別な場合を除いてはほとんどお断りしています。
「オレはあのアーチストが好きやから、こんなオーダーしたらどんな風に作ってくれるか見てみたい!きっと、ビックリするような期待以上のものが上がってくるに違いない!」
、、そんな気持ちのお手伝いをしたいと思っています。
アーチストは代筆屋じゃぁないから、「もっとこう造ってくれ」みたいな事言われても、
アート性が損なわれるぐらいなら聞くつもりもない。
いつまでに造れと言われても、アーチストのタイミングでないと、、ひらめきも、気の充実もないタイミングでモノ造るぐらいやったらやらんほうがましです。
金の為に駄作を造れと言うような真似、おれはするつもりがありません。
もちろんアーチストは、時間も出来も最大の努力をしますし、お客さんに喜んで貰いたいって言う気持ちでやってます。
でもうちの関わるアーチストは、自分が納得できる物しか造れない、いとおしい不器用者ばかりが揃いました。
だから受けるも、受けないも、、、間に合うも間に合わないも、、どんなデキになるかも、、
すべてはアーチストが決めます。
先日こんな依頼がありました。
オーダーの内容は、GREEN DIZ WEEDという革を使うアーチストへの依頼で、
フランケンが片面に描かれ、もう片面には幸運の図案が描かれたパースというものでした。
「フランケンとラッキー、、、脈絡が無いナァ、、あんまり1つの作品になりにくいかも、、」
俺はそう思いましたが、決めるのはアーチスト。受けるかどうか聞いてみました。
WEEDクン曰く、
「確かに、イメージが難しいですが、、フランケンもラッキーも好きな絵で、自分でもどんな風に出来るのか見てみたいんで、受けてみようかと思います。」とのこと。
それからラフを描いてお客さんにメールにて見てもらいました。
フランケンがタバコを吸っている絵と、裏にはまさにラッキーな柄が描かれた絵でした。
お客さんの返事は、
「凄くいいのですが、、、僕はタバコを吸わないので、違うフランケンの絵も見てみたいのですが、、」とのことでした。
WEEDクンとおれは、初めてフランケンはお客さん自身を象徴するイメージなんだと理解しました。
もう一回ラフを描いて欲しいとの旨をWEEDクンに伝えて数日待ちました。
出た答えは、、
「やっぱり、タバコを咥えたフランケンでいきたいです。
お客さんのオーダーと気持ちはわかった上で、それでもこれがベストだと思います。」
更に続けて、、
「フランケンシュタインの映画の中で、フランケンがタバコを吸うシーンがあリま
す。
追われて逃げるフランケンが盲目のおじいさんの小屋へ逃れ隠れるシーンで、
目の見えないおじいさんは、当然フランケンに恐れと偏見なく、、タバコを勧めま
す。
フランケンはそのタバコを吸った時、始めて幸福そうにするんです。
何の良い事もないフランケンが、無表情のフランケンが、たったワンシーンだけハッ
ピーに見える、唯一表情を与えられるシーンなんです。
お客さんのオーダーは良くわかってるつもりです。
ご自身がタバコを吸われないとおっしゃっているのは、描かれるフランケンはお客さ
ん自身を象徴するイメージのオーダーだと思っています。
そうお受けした上で、それでも、、
タバコを吸っている絵がベストだと思います。
フランケンと、後のウサギとの絵にはどこか関係を持たせにくいイメージがありま
す。
でも、フランケンにタバコを吸わせる事で”幸福”というキーワードで1つの意味を
なす作品に成れると思います。
作るものとして重要な事の1つが作にテーマを持たせることだと思えば、
お客さん自身がタバコを吸わないからこのアイディアをNOにするのではなく、この絵である必要 があるからコレで良くとお客さんに言っていただきたい。」
それを聞いておれは、何ともいえん良い気持ちになってお客さんに再度交渉しました。
上に書いたWEEDの思いが出来るだけ伝わるように、なぜタバコを咥えているフランケンである必要があるかを伝えた上で、
「タバコのフランケンでいくか、、それとも今回は断念なさるかのどちらかになさるの
がいいかと思います、と提案いたします。」
、、、お客さんが依頼を断られたようでショックを受けるかもしれないナァとおもいながら、
でもそう伝えました。
オレの気乗りがしない、残念なお伝えも、、アーチストの込めたる思いがそこにあるならそれを守るのもまたPeepShowGalleryの仕事やから。
こうも伝えました。
「WEEDの言葉は代案はあのアイディアでないなら、フランケンに何か添えて描くのではなく、フラン ケン単体で描かせていただけないかということでした。
KUSTOMという仕事が、誰かのイメージの代筆ではなく、お客さんと何度も話し合って
その人だけのベストな物をアーチストも一緒になって作ることだとすれば、
お客さんにはタバコを吸うフランケンで行こうとおっしゃっていただきたい。
そして、このアーチストの作に込めた思いと一緒に、出来上がってくる作品を長く愛
していただけたらと思います。
OOさんは、うちの大事なお客さんの一人です。
何処までもお気持ちに沿いたいと思います。
しかしながら、心から尽くすという事は、必ずしもいつも”YES”という事ではない
と思います。
アーチスト案と気持ちを汲み取って貫禄かと、気に入らない物を買っていい道理がないので断念して良断かとおもいます。」
、、しかし、お客さんの懐が深かった。
お客さんの返事は、、
「今回、WEEDさんのアイデアを聞き、私自身納得というか感服いたしました。
”幸福”というキーワードで表裏が繋がり、私が考えてた以上の意味と価値が生まれ
たと思います。
おっしゃる通り、自身を象徴するイメージでのオーダーでありましたが、
ちっぽけですがそんな私のこだわりを打ち砕くだけのデザインアイデアであります。
このコインパースを見た人が、タバコを吸わない私がなぜこのデザインを選んだ(オー
ダーした)のか、それを説明できる喜びもいただけた気がします。
普通にオーダーするならこんなやり取りは経験出来ませんね。」
そう書いてくれました。
WEEDくんもおれも、すごく幸せな気分になりました。
オレもWEEDクンもきっと、こんな経験の為にこんな難儀なシゴトしてるんやナァと思います。
今、オレの文章を読んでくれてる人は、、
”K”ではじまるKUSTOM、、そのイメージにつながるアートに興味がありますか?
こたえが”YES”なら、オレとも、うちのアーチスト達とも、、きっといろんなものが共有できると思います。
目に見えるもの、手にできるものではなく、、
もっと欲しい、いろいろのことな。
もしあなたが、、自分だけの為の、でも、、自分の思うよりもっとカッコいいスペシャルを手に入れたいって言う気分になったら、、
いつかPeepShowGalleryにお声をかけて下さい。
いつか、アナタが望む以上のものを造るお手伝いができれば、、
オレもオレの友人にとってもそんな光栄な事はないです。
いつか。
PeepShowGallery 濱田